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JTBグループと観光教育の関わり

―JTBグループと観光教育の関わりについて、概要をお聞かせください。

 

 JTBグループの中には、観光教育関連の事業をしている組織が、主に3つあります。

 まずは、「JTBトラベル&ホテルカレッジ」。JTBが自社で運営する、旅行・ホテル・ブライダル分野の実務者を育成する専門学校です。

 次に、㈱JTBコーポレートセールス。ここは主に法人旅行を扱う子会社ですが、この中に大学教育・経営のサポートをする部署があります。「優れた観光教育を提供し、大学のブランド力を高めるお手伝いをします」という提案をしている。本来の旅行会社の事業領域を超えていますが、もはや切符を売るだけが旅行会社の仕事ではない、ということの表れですね。

 そして、私の所属する㈱JTB総合研究所。もともとは㈱JTB能力開発が教育事業を専門にしていましたが、今年2月に組織改編され、JTB総研に吸収されました。「旅行地理検定」などの検定試験を運営したり、教材の制作、販売を行っています。教材とは例えば、「旅行業務取扱管理者試験対策教材」や「旅行地理検定」の参考書、観光系学部・学科で使われる観光学や航空・ホテルビジネスの教科書、JTBの新入社員などが使うビジネスマナーの教科書などです。

 

―教員の派遣もされているとか。

 

 はい。旅行業の対策講座などへの派遣がメインです。学校側から依頼を受けて人員を探しますが、紹介するのはJTBの現役社員とは限りません。JTBのOBOG、他の旅行会社のOBOGを紹介することもあります。

 

―観光系学部・学科にはJTBグループ出身の教授が多くいて、それもJTBと観光教育の大きな関わりだと思います。もちろん様々な招聘の形があると思いますが、企業内でどのように推薦されるのでしょうか。 

 

 現役で教壇に立っている人もいますが、多くは企業内からではなく、退職者ですね。そして、その人たちが「招聘」されて行っているかというと、違います。もちろんちゃんと大学の公募に応じて入った人もいますが、社員時代のつてで大学教授になるケースが多いです。すでに教授をしている知人から、「俺今年で辞めるから、次やってくれない?」と頼まれるんですね。

 

 

全国の観光教育現場を回る中で

―内田さんは全国の観光関連の学部・学科や専門学校へ、教材の営業をされています。どのような仕事か、お聞かせください。 

 

 メインは教材の販売です。加えて各種検定の案内や観光教育のコンサルティング。例えば、新しく観光系学部を設立する際のカリキュラム作りなどを支援します。

 営業に伺うのは、必ずしもうちの教材を使っている学校だけではありません。他社の教材はどこが良いかなど、情報交換のためにも伺います。逆にこちらからは、観光業界の就職・採用動向などに関する情報を提供します。要は、目先の利益だけでなく、観光教育全体のベースアップをしたいんです。

 

―全国の観光教育現場を見ていて、課題として感じることはありますか?

 

 多くの学校が頭を抱えているのは、学生の基礎知識レベルの低さです。例えば、18歳時点つまり大学や専門学校入学時点で全国47都道府県、県名と県庁所在地を全て言える人が、観光系の学生のうちどの位いると思いますか?

 

―8割はいてほしいですね。

 

 いや、観光系の学生で3割ですよ。

 地理を知らずに旅行会社に入れますか?入れますよ、今は「人物本位」という言葉があるので。でも入ってからどうなります?お客様が迷惑する、採った企業が迷惑する、本人も困る。だから入社3年で3割が辞めていくんです。基礎知識レベルが低いんです。それをどうするかが学校にとっての課題なんですよ。

 地理は基本的に暗記科目ですから、本人が覚えるか覚えないかです。じゃあどうやって覚えさせるか。そこで我々が、「こういうツールがありますよ」と情報提供をするんです。「学生が覚えやすい教材を提供しないといけないんですよ」などと、クラスマネジメントが上手く進められるよう、先生方にアドバイスするんです。

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