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旅行業界 発展のカギは「人」

 

―日本旅行業協会(以下、JATA)では、人材育成・獲得を大きなテーマに掲げ、学生向けの事業を強化しています。まずは、背景をお聞かせください。

 

 昔から旅行業界は『人がすべて』と言われています。お客さんとの信頼関係で

仕事が成り立っていきますから、旅行会社の一番の資源は働く人です。

 その前提に加えて、今人材獲得・育成に力を入れる背景は、新卒学生の

志望状況に大きな偏りがあることです。

 

 一つは男女の格差。20年ぐらい前まで、旅行会社は就職人気企業ランキング

常に上位で、リクルート活動をそれほど熱心にしなくても男女問わず学生が

集まっていました。しかし、女子には今でも人気ですが、最近は男子にあまり

人気がない。男性からの不人気は、長期的に見て大きな課題です。

 もう一つは、大手中小企業の格差。他の業界と同様、JTBのような上場企業

には毎年何万人単位でエントリーが来ますが、中小旅行会社はなかなか学生

に目を向けてもらえません。中堅どころにも、しっかりとお客さんをつかみ、

財務体質も安定している会社がたくさんあるのに。

 

 日本には旅行会社が約1万社もあるのです。そのうち、JATA会員企業が1200社。海外旅行・国内旅行を主催できる第Ⅰ種のうち、上から数えて1200社がJATAに加入している、というわけです。1200社全部とはいかなくても、半分以上は就職先として視野に入れてもらえるよう、業界の魅力発信やマッチング事業を積極的にしていきたいと考えています。

 女子はもちろん、男子にも多く来てもらいたい、トップブランドの会社だけではなく幅広く見て就職活動をしてほしい。それが人材獲得・育成を掲げた背景です。バランスよく人材が集まってこそ旅行業界全体が活性化します。

 

JATAの取り組み ―合同インターンシップと、旅博会場での業界研究セミナー―

 ―人材獲得・育成の取り組みについて、概要をお聞かせください。

 

(1) JATA合同インターンシップ(3年生対象)

(2) 旅博会場での旅行業界研究セミナー(3年生対象)

(3) 旅博会場での合同就職説明会(4年生対象)

の3つです。業界研究セミナーは今年で2回目、インターンシップと就職説明会は初の試みでした。

 

―今年8月に主催された合同インターンシップについてお聞かせください。

 

 8月19日~29日の9日間の日程で行いました。受け入れ企業はJATA会員の17社、13名の学生が参加しました。

 初日に旅行業の概論を説き、2日目は実際に旅行会社の新入社員研修で使っているマナー講座を導入。ビジネスマナーや「EQ※」を、1日かけてプロの講師に指導してもらいました。インターンシップでは学生が邪魔者扱いされてしまうケースが多いので、受け入れ企業に任せきりにせず、JATAでこれらの導入教育を行ってからそれぞれの会社へ送りました。中6日間で、2社ずつ職場を体験。最終日は、総括として『若者にもっと旅行に行ってもらうには』というテーマでディスカッションをしたり、入社3年目の若手社員に仕事の面白さを話してもらいました。

 

(※EQ…(Emotional Intelligence Quotient)感情のコントロール能力。IQ(Intelligence Quotient)=頭の良さに加えて、ビジネスマンに必要な対人関係能力を測る指数)

 

―プログラムのポイントは。

 

 一人の学生が、異なるタイプの会社を二社ずつ体験するよう

組んだことです。例えば大きい会社→小さい会社、店舗系の

会社→メディア系の会社、団体営業専門の会社→インバウンド

専門の会社といったように。

 そうすることで、旅行会社の規模や業態の幅広さを感じて

もらえたのではないかと思います。

 

―参加した学生の様子はいかがでしたか。

 

 最初は社会経験ゼロだから戸惑いがあったでしょうが、本格的な導入教育を受け、本当に現場で行われている仕事を体験しただけあって、学生たちは9日間で大きく成長したと思います。

 事後アンケートでは、「大手企業・中小企業両方へ行ってみて、旅行業界の中でも会社によって社風・考え方・課題など様々であることが分かった」「実際社内で行われていることを、単純なもの・細かいものまで幅広く体験できた」といった声が届いています。

 

―受け入れた企業の反応はいかがでしたか。

 

 「受け入れて良かった」という会社が多かったです。「JATAから言われたのでしょうがなくやりました」という意見も

あったけど(笑) 今回受け入れていない企業の社長からも「どうだったの」とよく聞かれますし、企業側の関心は高いですよ。

 

―企業にとって、インターン生を受け入れるメリットとは

何でしょう?「良い学生がいたらそのまま採用したい」ということなんでしょうか?

 

 基本は会社の宣伝です。「優秀な学生を発掘できるから受け入れた」という企業が多いですが、インターンシップは基本的に採用とは関係ないものだから。もちろん「すぐにでも採用したい」と思う学生にも出会いましたが、そういうものではないからね。

 ただ、学生からしたらインターンシップ参加した企業は

エントリーシートくらいパスさせてほしいよね。

 

―・・・シード権はほしいですね。

 

 そうだよね(笑) でも、インターンシップはあくまで業界の仕事を

知ってもらうためのもので、採用に直結させてはいけないという

経団連の規定があるんです。

 

―来年度に向けた課題は。

 

 今年は参加者が13人に留まりましたが、業界としてやる事業ですから、それでは足りません。今年は受け入れ企業を複数探し、取りまとめて大学に募集要項を送るのが6月になってしまった。優秀な学生はインターン先を5月には決めてしまうそうですから、次年度は3月くらいに発表できればと思います。学生数を50~100人規模にしたいですね。2社体験がポイントなので、受け入れ企業も2倍必要になって大変だけど(笑)。

インターンシップの様子

参加した学生と

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