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―続いて、旅博会場(9月13日業界日)で行われた業界研究セミナーについてお聞かせください。

 

 旅博会場で、初めに旅行業の概論を説き、その後、入社3~6年目の若手社員に仕事の面白さや大変さをパネルディスカッション形式で話してもらいました。偉いおじさんが話すより、若手社員が話す方が身近に感じてもらえるだろうということで。一日に2回開催し、各回200名くらいの学生が聞きに来ました。(内容の詳細は「Travel vision」に掲載)。

 

―どういう層の学生が集まりましたか?観光系学部の学生は。

 

 いや、キャリアセンターを通して告知したので政治・経済・

社会学部など色々。観光系学部の学生はむしろ少なかった

です。

 

―同日に、4年生対象の合同就職説明会も開催されています。

 

 学生にバイアスを持たせないため、事前の告知では参加企業名を伏せて各社のセールスポイントだけを伝え、参加企業は当日発表しました。その場での採用決定も想定していました。

 ただ実際来場した学生は10人くらいで、少なかったです。宣伝が行き届いていなかったのが原因かもしれない。来た学生は各社回ってくれ、何人かはその後面接を受けたと聞いていますが、その場で採用が決まったケースは今回はありませんでした。

旅博で開催した旅行業界研究セミナー

旅行業界に就職すること、旅行会社で働くこと

―旅行業界の新卒採用状況についてお聞かせください。

 

 日本には約1万社の旅行会社がありますが、中小企業が9割です。そのうち海外の募集型企画旅行を扱える第Ⅰ種は約700社。その中でも従業員の規模や取扱い額は様々です。人数はもちろん大手の方が採用枠が大きいですが、中小企業でも意外と新卒採用をしています。特に、100人以上の従業員規模の会社はたいてい定期採用をしています。

 また、個人旅行のお客さんからは見えない所で仕事を持っている会社がたくさんあります。例えば業界研究セミナーで若手社員が登場した㈱NOEや日新航空サービス㈱。どちらも業務渡航が中心の会社です。皆さんが知っているような総合旅行会社以外にも、業務渡航専門やネット専門の会社、熟年のお客様対象に秘境的なデスティネーションばかり行く高級商品を扱う会社など様々。それぞれ個性的な仕事をしています。

 

―個人的な経験になりますが、就活で中小の旅行会社はなかなか見つけづらかった覚えがあります。

 

 中小旅行会社のデータって学生の目に見えるところには意外とないんだね。もっとそういうデータを出していけばいいのか。

 

―観光系学部といっても、先生方は大手企業出身の方が中心ですから、中小旅行会社については自分から調べない限り学生が知る機会は少ないと思います。良いか悪いかは別として、どの大学もJTBの方が圧倒的に多いですね。

 

 その点は、観光系学部・学科でも見直す必要があるのでは?JTBグループは事業内容として旅行会社の枠を超えていますから、JTBのような企業こそが旅行会社だと思うのは誤解です。

 それに、例えばJTBに入っても子会社の社長にはなれるかもしれないけど、本当のトップであるグループの社長にはなれないでしょう、激戦だから。中小企業に入った方が出世が早いし、社長にまでなれるかもしれない。自分の力で会社を大きくしていくこともできる。大手の旅行会社では、団体旅行で成績を残すか、財務にすごく強くなければ、偉くはなれないでしょうね。

 

―団体旅行で鍛えられた人が出世していく、というのは業界の通念なのですか?

 

 団体旅行は、営業をする中でいろいろな職種・所得層のお客さんと折衝し、企画を提案していく「ソリューション営業」ですから、そこで鍛えられた社員は力が付きますね。その力が、経営者になって活きてくると言われています。

 

―越智さんも長らく団体旅行を担当されていたんですよね。

 

 私はコテコテの団体です。世界中回って、企画の手配、アポイント確認、食事や宿の世話、通訳、事件・事故発生時の対応など、1から10まで全部やってきました。

 店頭でパッケージツアーを売りながら上司の元で仕事するのと、若い時から1人で海外の現場に放り出されて、ストライキだのデモだの次々起こる中、自分でお客さんの安全を確保しながら仕事をするのとでは、やはり成長度合いに差が出ます。修羅場を潜り抜けてこそ強くなるんです。だから旅行会社の経営者は、団体旅行の営業出身の人が多いんです。店頭販売だけやっていて社長までなった人はあまりいないかも、という話を、先日も旅行会社の人事の人と話していました。

 

―聞きづらいのですが、旅行会社は仕事量の割に待遇はそれほど、というイメージがあります。

 

 経営側の事情を説明すると、一般的に旅行会社では、人件費が総予算の6,7割を占めます。それをコストと見るか投資と見るか、それぞれの会社で立場が異なります。人件費というのは最も調整し易いので、売上が下がれば少しずつボーナスや教育費を絞るという判断をせざるを得なくなる。雇用を守ることは大切ですが、第一義は会社を存続させることです。

 学生が企業を選ぶ視点として一つアドバイスできるとすれば、勤続年数が一つのバロメーターになる、ということです。旅行会社の経営者の中には、新卒の、まだ人件費が安い子を大量に入れて、3年ほど経ったら辞めてもらって、また新しい子を採用する方が会社の人件費が上がらなくて良いと思っている人は実際にいます。年取るとノルマをきつくして、辞めざるを得ないようにするとかね。平均勤続年数をチェックしてみて、極端に短い会社は、そういう経営方針である可能性があります。平均勤続年数は学生でも調べれば分かりますから、見ておくと良いでしょうね。ただ上場していない会社は情報が出ていないですから、その場合はOB訪問をして、会社の先輩社員に聞いた方が良いです。

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